フィジカルAIラボ 0.3:見る・考える・動く――3 つの周波数をそれぞれのシステムに戻す

公開小テストは詳しい解説付き。ログインすると、架空ロボットのタイミング表、ログによる接触の原因診断、証拠カードの課題に、解答例と採点基準付きで取り組めます。

この回の動画

ナレーションは AI 合成音声です。 動画の章・文字起こし・出典

文字起こし

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知行の問い

ロボットの一秒間って、いったい何で忙しいの?前回は、三本の曲線がそろって上向く話でした。今回は、その一秒間をスローで再生します。ロボットがコップを持ち上げて、となりのペットボトルをよける。それが何段階なのかを見ていきます。

見る

まずは一歩目、観察です。持ち上げたいコップも、倒したくないボトルも、カメラから目に入ってきます。ある論文の公開データセットは、映像を毎秒十五コマ保存しています。ロボットは自分のことも見なければなりません。手がどこにあって、どれだけひらいているか。カメラに映るのも、平面だけではありません。コップが手からどれだけ離れているか、手で取れるかどうか。それも映像から計算しなければなりません。外の世界を見るだけじゃなくて、自分の手もじっと見てるんだ!

考える

二歩目、考える。実は二つに分かれます。じっくり考える側と、すばやく動作を出す側。ある公開ロボットモデルは、この設計を採用しています。遅いほうが、まず段取りを考えます。コップをつかむ、ボトルをよける、それから脇に置く。ある論文のロボットは、こう動きます。二十五ステップ進むたびに、およそ半秒ごとに考え直す。考えるのは一度で終わりじゃなくて、何歩か進んで、また考えるんだ!

動く

あるロボット会社のインターフェースは、毎秒千回、制御コマンドをやりとりします。考えた道筋は、この層に任せて、モーターがその都度、細かく調整します。なぜ、そんなに速くないといけないのでしょう?一拍遅れると、手がずれて、となりのペットボトルを倒してしまうかもしれません。たとえるなら、大脳はゆっくり考え、小脳はすばやく動かす。考えるのはときどき、動かすのはずっと速い。ただし、これはあくまでたとえです。見る、考える、動く。これがつながって、一つの輪になります。一秒のあいだに、この輪は何周も回ります。ループの更新が速ければ、ずれにいち早く気づいて、動きを調整できます。でも、高速な更新は、動きの正確さを保証しません。速くて正確、となると、ロボットはまだまだです。ふりかえりです。ポイントは三つ。一つ、見る。周囲の状況も、自分の状態も見ます。二つ、考える。じっくり考える系と、すばやく動く系の二つがある。三つ、動く。いちばん下の制御は、ずっと速い。一秒のあいだに、ロボットは見て、考えて、動いて、何周も回ってるんだ!本物のロボットだけで実験するのは、遅いし、コストも高い。じゃあ、まず仮想の世界で試せないかな?また次回!

根拠と出典

毎秒15コマ · 公開ロボットデータセットの記録頻度(映像も動作も毎秒15回記録) [R] · arXiv 2403.12945 · DROID(Appendix B)

遅い系と速い系 · 公開人型ロボットモデル GR00T N1.7 の二重システム構造:高レベルの推論と低レベルの動作を分ける [O] · NVIDIA · Hugging Face ブログ「GR00T N1.7」

25ステップ/半秒 · π0 は50ヘルツで動くロボットで、25ステップ分の動作を実行するたびに、約0.5秒ごとに推論し直す(論文) [R] · arXiv 2410.24164 · π0(Physical Intelligence、Appendix A-D)

毎秒1,000回 · あるロボット会社の制御インターフェース(FCI)は、1キロヘルツで低レベルの制御指令をやりとりする [O] · Franka Robotics · Tactile Mobile Robot(FCI)

練習とセルフチェック

小テストは公開で、回答するとすぐ解説が出ます。読み物の練習問題の答えはログイン会員向けです。

図:「3 つの周波数、3 つの別々のシステム」という見出しの下に、中央揃えの文字が 3 列並ぶ。各列の上には番号のない円形の印と横線があり、その下に「DROID データセット 映像も動作も 15 Hz で記録」「π0(50 Hz のロボット)25 動作の実行後 約 0.5 秒ごとに再推論」「Franka FCI 低レベルの制御と計測を 1 kHz で」と書かれている。列の間に矢印はない。
3 つの周波数は 3 つの別々のシステムのもので、1 台のロボットの仕様として組み合わせることはできません。出典:DROID 論文 Appendix B、π0 論文の付録、Franka TMR の製品ページ。

第 0.3 回の動画は、ロボットの 1 秒間を「見る・考える・動く」の 3 段階にスローで分解し、その中で 4 つの根拠を示しました。毎秒 15 コマ、遅い系と速い系、25 ステップごと(約半秒)の考え直し、毎秒 1,000 回の制御指令です。このページはその回の解説と応用練習です。文字起こしを繰り返すのではなく、4 つの根拠をそれぞれのシステムに戻し、周波数を周期に換算したうえで、架空のロボットを使ってタイミングの組み立て、ログの読み取り、証拠の確認を練習します。全体を通すルールは 1 つだけです。ある周波数は、それを測定または公称したデータセット、モデル、ロボット、インターフェースだけのものです。

動画・文字起こし・出典は動画・文字起こし|フィジカル AI ラボ 0.3: 見る・考える・動く、シーズン全体の計画は講座の概要をご覧ください。本ページも前の 2 回と同じ例を使います。コップを持ち上げ、となりのペットボトルを倒さないことです。

公開の 5 問の小テストには詳しい解説が付いています。ログインすると、架空のロボットの階層別タイミング表づくり、架空のログによる 3 回の接触の原因層の診断、言い過ぎた 3 つの言い換えへの証拠カードづくりの 3 つの課題に取り組み、解答例・よくある誤り・20 点満点の採点基準と照らし合わせられます。

1. 4 つの根拠は 4 つの別々のシステムのもの

まず、動画の 4 つの根拠をそれぞれの持ち主に戻します。「誰のものか」の列に注目してください。同じロボットについて述べた行は 1 つもありません。

根拠誰のものか出典に書かれていること等級
15 HzDROID データセット(Franka Panda アーム、Polymetis コントローラー)すべてのデータを 15 Hz で記録。動作は関節空間とエンドエフェクター空間の両方で、15 Hz の制御周波数で記録R(著者報告)
25 動作 / 0.5 秒π0 論文で 50 Hz で動くロボット25 個の動作を実行したあとに推論し直す。つまり 0.5 秒ごとR(著者報告)
遅い系と速い系GR00T N1.7 モデルSystem 2 が高レベルの推論と作業分解を、System 1 がモーター指令の生成を担う。引用した本文には、どちらの周波数も書かれていないO(ベンダーの一次情報)
1 kHzFranka Control Interface(FCI)、Franka TMR の製品ページ低レベルのリアルタイム制御値を 1 kHz で送り、計測データを 1 kHz で取得するO(ベンダー公称)

同じブランドに 3 つの周波数。これらの資料には「Franka」が 3 回登場します。DROID は Franka Panda アームを使い、動作を 15 Hz で記録しています。π0 論文は、20 Hz で動く UR5e と Franka のロボットでは 0.8 秒ごと(16 個の動作を実行したあと)に推論すると書いています。Franka 自身の製品ページは、FCI が低レベルの制御値を 1 kHz でやりとりするとしています。3 つの記述は同じことを言っていません。それぞれ、データセットの記録周波数、ある方策が特定のロボットで出す動作の周波数、低レベルインターフェースの公称周波数です。また DROID の抜粋は、そのコントローラーがアームの低レベルのループにどうつながるかを説明していません。そのため「DROID のアームは 1 kHz で動いている」とは推論できません。

制約と注意点

  • DROID(arXiv、2024-03-19)と π0(arXiv、2024-10-31)の数字は著者報告で R 級です。GR00T N1.7 の構造と FCI の 1 kHz はベンダーのページによるもので O 級です。本サイトはいずれも独自に再現していません。
  • Franka のページで紹介されている TMR はプロトタイプ(Prototype)と表示されています。1 kHz は FCI の公称性能で、特定のロボットでの測定結果ではありません。
  • π0 の推論時間は、RTX 4090、カメラ画像 3 枚、flow matching 10 ステップという条件にのみ対応します。ハードウェアや設定が変われば値も変わります。
  • ロボット R、そのすべてのパラメーター、0.5 秒の要件、「推論は実行と重ならない」という設定、課題 2 のログは練習用の架空のものです。得られた 1.04 s、0.44 s、1.0 s はどのシステムの性能でもなく、紙の上の計算はハードウェアの安全検証ではありません。
  • 「見る・考える・動く」や「大脳と小脳」は単純化した説明です。実際のシステムでは、知覚・計画・制御がしばしば絡み合っています。

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